第七期 第3回京都クオリア塾 令和3年7月3日
「ポストコロナ時代を音楽を通して考える~
『分け隔てない集い』は復旧するのか?
7月3日(土)10時~14時
第3回は西洋音楽史研究の第1人者、京都大学人文科学研究所の岡田暁生教授を講師に、音楽を通して近代史を振り返りながらアフターコロナ、ポストコロナを考えました。
岡田教授は、18世紀後半、近代社会の始まりとともに生まれたたバッハ、モーツアルトらのクラシック音楽は、19世紀後半にはコンサートホールが作られ、大都会における市民社会の感動を共有する“場”として機能させた。近代市民社会の統治には感動させる音楽が必要で、ベートーヴェンの「第9シンフォニー」は社会システム整備のための仕掛けであった、と語ります。
オーケストラを工場に例えると、ヴァイオリンやヴィオラなどの各パートが、監督役となる指揮者のもと総スコアでスケジュール管理される、となる。高度経済成長時代に団結感を演出した「第9」や山本直純の「大きいことはいいことだ」が夢であった、と気づいた今、次の新しい一歩を踏み出すための音楽は何だろうか、と問いかけます。
一方、岡田教授はスポーツイベントや万博なども西洋音楽とほぼ同じ19世紀後半から始まり、その後のイベント資本主義に繋がる。直近の東京オリンピックはその最たるもので、コロナをチャンスにした変革に取り組めていない、音楽もしかりとした上で、芸術の前に芸能であれ、日常生活に必要な音楽は地域にある、と指摘しながら感動産業がプロパガンダとされた近代からの脱却を求めました。
この後クラシック音楽と普遍性、西洋音楽と日本人、グローバルとは、などについて岡田教授と意見交換をしながら近代を振り返りました。