第九期 第5回京都クオリア塾 令和5年10月28日
「精神分裂病」を「統合失調症」という病名に改める作業の先陣となり、重度の精神障害者を病院で隔離するのではなく地域で支援するACT(包括型地域生活支援)を組織化した高木さん、「先生の呼称廃止国民総運動の代表です」と語りながら専門家任せの医学界のヒエラルキー社会に警鐘を鳴らします。
日本の精神科病棟は、1970年代の高度経済成長期に開設され今や日本は精神病院大国。海外では障害者問題の解決を、とこの頃から精神病院が減っているのと真逆で、日本の病院ベッド総数の5分の1、35万床も存在している。山の中の静かな場所にある精神科病棟に患者を閉じ込め専門家に解決を任せ、患者を孤立化させる。大学生の10人に1人が発達障害と言われる今、隔離ではなく社会で管理することはできないのだろうか、と語りかけます。
1990年代からの新自由主義で労働の流動化が進む中、フィンランドの精神科では入院させるのではなく、地域を巻き込み専門家を置かない対話による治療の「オープンダイアローグ」で成果を上げていた。高木さん、このダイアローグで従来のヒエラルキーを否定し、患者も含めて「もやもや感」を共有しながらの治療を進めた。薬もいらない。さらに障害者雇用のために一乗寺ブリュワリーを開設、「ビールやの親父となりました」と語りながら、クラフトビールをつくりブランド価値の向上にも取り組んでいる。そんな高木さん、企業は多様性と言いながら、人材の個性を大切にしていないのではと語り、「インクルーシブな社会」(誰も排除されない社会)が求められている、と指摘されます。
精神科医としてのご自身の経験をもとに「自らが変わるのは難しいが、自らが変わることで組織が元気になる」と語る高木さん、対人支援の価値を信じて取り組んだダイアローグは精神科治療という分野だけでなく組織の再構築に大いに役立つ、その為にはまず自らが変わりそれを組織内に感染させよう、と結びました。