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ワールドカフェ
農業を食の観点から見直してみようという今年最後のクオリアAGORA、様々な課題が浮き彫りとなりました。 その中から、農業で食っていけるためには何をすべきか、何を変えなければならないのか、そして若者たちが農業に参入できるようにするためにはどんな改革が必要かを、存分に語り合っていただきました。
[ 各テーブルのまとめ ]
●1第テーブル 報告者 上田 源 (同志社大学学生)
今年の最後なので、アンチテーゼとして皆さんに何かを提唱しようと思います。 われわれが大学生の代表と考えていただいた時に、何で、出汁の味がわからないんだといわれても、われわれが食ってきたものは、ハンバーガーとカップラーメンというのがぶっちゃけた話。 親が冷凍食品をチンしてたわけですから、そんな合成調味料の中で生きてきたわれわれに、出汁の味と言われても、そんなもの知るか、と思って生きてるわけです。 われわれの次の世代は、「食育」が大事だと、出汁をとったものを食べさせようとし始めている。 それはそれでいいけれども、われわれゆとり世代のことはもう諦めてくれ、と。 ほんとにそう思っている。 われわれは、カップ麺を食って生きていくし、ぶっちゃけた話、レトルトのご飯100円と、カレーのルー100円とカップ麺一個100円の計300円で十分満足して、「オー、食った食った」と言えるんですよ。 だから、食育だの、味がどうだのといわれても、私は個人的には全くどうでもいいことです。
それで、本題の若者が参入できる農業です。 ま、その一つの選択肢として、農民が食える、食べていけるっていうのが必要だろうっていうことになりました。 その時に、さきほど、山口先生のお話にあったように、かなり補助金が入っている、と。 でも、それ、ちょっと視点を変えて国土保全をしているんだ、という観点にすれば、見方が変わってくるんじゃないか。 やはり、農業には多機能的な性格があって、一般的には、農作物を作った、いかに作れたかというだけで、測ってしまうけれども、耕す畑や田んぼを作れる土壌があるっていうことは、やはり国土の保全という意味の観点では、税金を入れていくっていうこともありなのかなと。 個人的には、若者としては、「公務員だよ、これが」っていえば、多分、若者は参入するのではないか。 なりたい職業は公務員っていうのが多いですから。 公務員として、農業やってくださいって言われれば、結構、入ってくるんじゃないのかな。 生活もそうやって成り立つんだったら、いいのかなと私は思っています。
高田 公理 (佛教大学社会学部教授)
彼は、ハンバーガーとカップ麺。 ぼくらはね、アメリカ製のタバコの匂いのするミルクとしょうもない小麦粉で育った。 それ、やっぱりまずいから、もうちょっとどうにかならへんかなってね、教育をされたら、それで満足する。 これねえ、ちょっと悲しい。 された教育をもう一度、批判的に見るということを、ぼくらは多少したように思うんです。 その辺がね、きょう話を聞いていて、大変面白かったので紹介しました。
●第2テーブル 報告者 中野 千春 (市場調査社大阪)
このテーブルは、若者が不在のままで進んだんですが、知識がなかったものですから、末原先生に、農業に参入したがっている若者がいるのかどうかということから聞いてみました。 それはいろいろな興味から結構いるということでしたので、では、なぜ参入できないのかという話で言うと、ま、法律のこともあるんですが、そこはまあ、そこそこ緩和されてきていて、入れるようにはなってきていると。 一番高いハードルというのは、便利な都会を離れて田舎の方にいって、地元の人とうまくやっていかないとダメなので、そこが大きなハードルになる。 で、実際にどうやっていったらいいかというと、まま、何とかうまく地元の人にとりいって、教えてもらったりしないとダメっていう話がでたところで、ほんとに入りたい子がいるのかなと、私は個人的にはちょっとわからないけれども、とにかく、そんな感じで、入っていって教えを乞う、仲間を作っていくことが大事ですよ、ということでした。
それで、若者が農業に参入して何を喜びとできるのかっていうと、やっぱり作物ができる喜び、というのが一つ。 これ、教育で教えられるかどうかわからないですが、これが一番の喜びであると。 あと、若者が保守的になっていて公務員になりたいみたいな話があって、農業は、労働者でなくなり、自由な働き方を手に入れられ、自分のライフスタイルが作れ、頭のいい人なら、付加価値の高いものを作って、結構お金儲けもできるというところが魅力であると。 例えば、どういうものを作っていくと引きが強そうか、輸出するなり都会に持っていけるもの。 つまり、農業は、頭を使うともうかるというお話でした。
●第3テーブル 報告者 佐々木 勇輔 (京都大学大学院生)
私たちのグループとしましては、最初に、農民が生活できる農業とはということについて考えました。 で、需要の拡大が重要だと考えました。 現在ですと、日本農業としましても、新たな市場を拡大していかないことには利益も出せないということを考えまして、その時、ヨーロッパもいいんですが、人口の増加とか考えますと、新興国も非常に有望な市場と思います。 インドとか中国ですね。 そこで、日本の強みやできることを活かしていくことが考えられます。 醤油とかを現地にどう合わせていくかということを考えだしていくことも重要だと思いますし、また、逆輸出ということも考えられます。 例えば、インドのカレーを一度日本に戻し、日本で、日本流のカレーにしてまたインドに輸出すると、インドに新たな市場が生まれるということが考えられます。 このように、今日本にあるものを活かしていくことが、利益を出し、農業活発化につながる一つの方法だと思いました。
次は、若者の新規参入できる農業とはです。 新たな土壌の形成が必要だと考えました。 新たな土壌としましては、今ある地域ごとの集団より、少し大きな力を持った地域集団が大事だと考えました。 で、ここで大事になってくるのがプロデューサーです。 プロデューサーが、大きな銀行や国、大学とかの知恵を「出資」として集めて、その出資を元に新たな成功例をその土壌に作ることで、一つのモデルができれば、他に農業をやりたいと考えている人のやる気の向上とか、農業をどうにかしなくちゃいけないという危機感の向上ももたらし、最終的には働き方、新しい社会の形をもたらすんではないかと考えました。 新しい土壌の形成が大切だという結論になりました。
●第4テーブル 報告者 日田 早織 (京都大学大学院農学研究科生)
私たちの班では、若者たちが新規参入できる農業っていうことから考えたのですけど、その農業だけで食べられなくてもいいのでは、という話がありまして、例えば、若者が都会で働きながら田舎で農業を遠隔でとか、月に1、2回行くっていう形でやったりですとか、後は、各家庭で、家庭菜園とか水耕栽培っていう形で気軽に農業をするとかいうのも、参入しやすくていいんじゃないかなという話も出ました。
その時に、例えばアパート経営のように農業経営をして、それがコミュニティーとなれば、助けあうことによって、若者が月に1、2回っていうような形でもできるようになって参入しやすくなる。
それから、農業だけで食べていくっていうのは、天候の関係とかで、なかなか厳しかったりすると思うので、複数の産業、企業でカバーして、例えば金融が農業がダメな時にでも、お金を回したりとか、凶作の時にも他の産業で収益を確保するとか、そういう考え方が企業にとっても大事ではないかという話が出ました。
それから、大規模、小規模という話になったんですけれども、規制緩和されれば、企業の参入も増えて、それによって大規模な農業経営ができて、コスト削減し効率的のよい農業ができる。 それで、小規模の農家は食べられなくなるのではという話も出たんですけど、小規模の農家も頑張れということが大事で、ブランド化、差別化をすることによって、生き残る事ができる。 そういう形で、大規模との住み分けは必要だろうという話もしました。
また、市場の話もでて、日本だけでは狭いので、世界に打って行く。 その時には、生鮮食品だともちも悪いので、加工品として食文化とともに、例えば、和食とともに日本酒を売っていくとか。 そういうことが大事なんじゃないかということになりまして、で、日本酒を増やすには日本酒用のお米の生産量も増やさないといけないということで、まあ、これによってお米の生産量も増え、それで、若者が憧れて参入してくるといういい循環が生まれるのではないかっていう話も出ました。
そのようにいろんな農業の形があり、それが、適切な形でどうやったらやっていけるか総合的に考えていくのが大事で、龍谷大学の農学部で、総合的に考えて行くような勉強ができたらいいなあと思いました。
クオリアAGORA事務局
はい、ありがとうございました。 それでは、きょうディスカッサントで参加していただいてます大原さんから、一言お願いします。
大原 千鶴 (料理研究家)
初めての参加でしたが、みなさんの熱い思いを知り、ずいぶん勉強になりました。 今回みなさんとお話ししたことも、すぐに、効果が出ることではないと思いますけれども、こういうことでつながっていくことが、やがて世の中を変えていくんだなと感じられました。 ほんとに、ありがとうございました。
クオリアAGORA事務局
では、末原さんからもお願いします。
末原 達郎 (龍谷大学経済学部教授・農学部設置委員会委員長)
いろんな話を聞かせてもらいましたね。 プロデューサーになって銀行を参入させるとか、これもひとつの手です。 そういう学生も、龍谷大学でつくろうと。 決して、生産者だけではなくてですね、プロデューサー役がホントは一番大事なんです。 そういうプロデューサーのような仕事に、若者が参入してくると思ってるんですね。 自分の希望しているものが出来上がってくる過程というものは、多くの若い人が楽しいだろうと思うので、それは、ある種の格好良さにつながっていくんだろうと思っています。
まあ、ぼくは、それで思い切って、こういう違う分野にですね、新しい大学を作るということで参加しましたけど、意外と、みなさんから期待されていることがわかってとても嬉しいです。 これは、日本が老齢化していくことをどうやって解決していくか、われわれの人生をどう解決していくか、っていうことの起点となることだと信じてやってます。 それができるかどうかは10年、20年後の楽しみということで…。 きょうは、ほんとに良い意見をいただきまして有難うございました。
長谷川和子 (クオリアAGORA事務局)
どうもありがとうございました。 多分、農業を突き詰めていくと、多分、地域起こしみたいなものに行き当たるのかもしれません。 地域起こしをリードする人間は、プロデューサーもそうなんですが、よそもんバカモンがいいって話がありますので、やっぱり、多分、農業の中でも、それは、すごく重要なタイプなんではないかなと思います。 きょうのお話っていうのは、ある時にはエキセントリックに発言をするんですけども、発言しただけでなく、何かの気づきをちょっとだけでも持って帰っていただければありがたいかなと思います。
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