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第五期 第3回京都クオリア塾 / 令和元年7月20日

 

第3回「陶芸史からみる日本の世界戦略とソフトパワー」       
   前崎 信也(美術史家 京都女子大学生活造形学科准教授) 

近代までは世界の科学技術の最先端の結晶であった陶芸が、今では「伝統工芸」を代表する分野となった、その理由は何か。
陶磁器といえば「CHINA」と呼ばれますが、中国は唐時代にはすでに遠くトルコやエジプトまでも輸出していたそうです。しかし明時代末期に貿易を禁止する「海禁令」が出されると、日本が中国に代わってヨーロッパに向けて陶磁器を輸出、ここからマイセンも生まれます。

その後清時代の末期になると皇帝の力が弱体化、代わって開国した日本が世界をリードし、ジャポニズムと高い評価を受けるようになります。 陶磁器の歴史上この2回のみが中国に勝った。所が、日本は1974年に伝産法(伝統的産業の振興に関する法律)を制定し、伝統を守る、と方向転換した。変わらない伝統が産業の芽を摘む結果となった、と指摘されました。  
そして前崎准教授、「伝統は使い方」と話しながら、文化は何のため、誰のために存在するのか、と語りかけます。
明治に入り福沢諭吉は「帝室論」で、「日本の芸術は日本人であるためのよりどころ」として、皇室による保護が必要としました。また1900年のパリ万博ではフランス語訳の「日本帝国美術史」を日本より先に出版するなど、日本文化の紹介に取り組むのです。
明治の先人たちの偉業に触れ、直面しているグローバル化と日本の立ち位置を再確認するとともに、日本の、日本人のレーゾンデートルを共有する時間となりました。  

この後、藤森照信さん設計の茶室「矩庵」(徳正寺)へ場所を移し、前崎准教授、一茶庵宗家摘承の佃梓央さんとともに、先人たちが煎茶を通じて学んだ中国の思想などについて対話を行い、非日常の世界を愉しみました。

 


 

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