第七期 第5回京都クオリア塾 令和3年10月16日
「教育者とブッダ」
佐々木 閑(仏教学者 花園大学文学部教授)
10月16日(土)
仏教僧団(サンガ)は2500年前に仏教を開いたブッダの「教育のための組織」である。
世俗的な価値観になじめない人たちが僧侶となって出家社会を構成し、ブッダの教えを学び修業し、自己を発展させていく教育の“場”。しかし日本では、仏教が国の統治機構と位置づけられたため、このサンガを持たない、と佐々木教授は語ります。
サンガでは、生産活動に携わらず、お布施、即ち世間からの好意に依存して、和尚(ただ一人の教師)の下で最低5年間の義務教育をうけるが、その間何よりもサンガの法律が優先される。この教育により世間的価値観に洗脳されていることに気づき、自らと異なる価値観を認めて、深く学べばそれだけ世間的価値観から離れて、みなと同じでない人間が育つことになったと話されます。
我欲を自分の努力で消すことがブッダの教えであり釈迦の仏教、これに対して外側のパワーで我欲を消すのが大乗仏教と話しながら、ブッダの教育理念はサンガで受け継がれてきた。会社の中でプロジェクトをつくる際にサンガのような組織が必要では、と問いながらプロジェクトに選ばれた人は好きなことができるのであって、報酬を求めるのではなく誇りを持てるかだ、と結ばれました。
歴史的転換点に立つ今、どのように世界観を変えていくのか、ブッダの教育から学ぶところが多い、と確認しあいながら、この後煎茶を通じて日本の文化に触れました。
会場の京都市下京区の徳正寺本堂では、一茶庵摘承の佃梓央さんと京都女子大学の前崎信也准教授から中国や朝鮮の文化がどう日本化されたかを伺い、一同興味深いお話に興味津々でした。