第十一期 第3回京都クオリア塾 令和7年7月12日
第3回 2025年7月12日(土)
「アートについて考える」
前崎 信也(京都女子大学生活造形学科教授)
明治時代になって美術というジャンルが生まれ工芸と分離された日本、一方キリスト教と深い関係を持つ西洋では、神を理解するために標本研究が不可欠で分類学は長い歴史を持つ、と前崎教授は語りはじめます。膨大な資料を集め大英博物館の基礎をつくったハンス・スローン、ドイツ人医師で植物学者のシーボルト、「分類学の父」と呼ばれた植物・生物学者のリンネ、そして「種の起源」を著したダーウィンなどを例に標本学の歴史を振り返ります。しかし日本では1853年の黒船来航で西洋を知り、日本国として初めて参加したウィーン万博で工芸品や美術用品を初めて分類して出展する。1900年パリ万博を契機にジャポニズムが高く評価されアールヌーボー時代の幕開けとなるが、著作権の整備によりデザインの源としての日本は終わる。
一方でフェノロサと岡倉天心は法隆寺など仏教美術を調査、西洋美術に傾倒していた日本の美術界に警鐘を鳴らし、日本の文化的価値を明確にした。そして前崎教授、AIの時代を迎え分類の概念が変わる、と語られます。カメラの登場で抽象画やキュビズムが生まれたようにAIでどのような美術が生まれるか、美的なものの追及ではなくアンディ・ウォーホールのように私たちの暮らしはどこへ向かうのかを問う現代アートもそのヒントになるのでは、と問いかけます。分類をテーマにAIとアートを
考えた第3回、改めて人間とは、日本人とはについて考える機会となりました。
この後会場を徳正寺に移し、藤森照信東大名誉教授の設計による茶室を見学、煎茶の「場」を体験しました。そして一茶庵宗家嫡承の佃梓央さんとともに、江戸末期から明治にかけて大阪や京都で大流行した煎茶を愉しみました。お茶を媒介にしたサロンは今改めて注目されていて、塾生の皆さん方、美味しいお茶とともに会話を存分にしみました。
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人間ひとりひとりの深く高質な感性(クオリア)に価値を置く社会、これは各人の異なる感性や創造性が光の波のように交錯する社会ともいえます。
京都からその実現を図ろうと、各種提言や調査、シンポジウムなどを開催した京都クオリア研究所ですが、2018年に解散したため、㈱ケイアソシエイツがその精神を受け継いで各種事業に取り組んでいくこととなりました。
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