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第8回クオリアAGORA 2016/健康~肥満のホントの理由とは!?



 


 

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/~京都から2030年の未来をつくる~「健康をつくる!~肥満のホントの理由とは!?」/日時:平成28年2月25日(木)18:00~21:00/場所:場所:京都大学楽友会館会議場-食堂/スピーチ:森谷敏夫(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)/【スピーチの概要】今も地球上で多くの人が飢餓と戦っているが、機械文明が発達した国では飽食と運動不足による肥満が目立っている。 日本においても40代の男性の3人にひとりがメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に罹っている可能性が極めて高いと指摘されており、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の温床となる肥満の克服が国民的課題となっている。 第8回は肥満研究の第1人者で、自らも毎日8キロのジョギングを欠かさないという森谷敏夫京大教授をスピーカーに、討論には医師の田邉卓爾氏招き、肥満と健康づくりを考えます。  /【略歴】森谷敏夫(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)1950年兵庫県生まれ。 80年南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。 テキサス農工大学大学院助教授、カロリンスカ医学研究所国際研究員、米国モンタナ大学生命科学部客員教授等を経て92年京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、20年から現職。 専門は応用生理学とスポーツ医学。 国際電気生理運動学会会長、アメリカスポーツ医学会評議員、EBH推進協議会理事長などを歴任。 著書に「ダイエットを科学する」「生活習慣病の面白健康科学」「メタボリアン改造計画」など。 「ためしてガッテン」「タケシのニッポンのミカタ」などTVでもおなじみ。




この地球上の多くの人々は飢餓と毎日戦っており、「肥満」という文字は存在しないのです。 肥満が目立つのは機械文明が発達した国の 飽食と運動不足社会だけといっても過言ではないでしょう。 日本も例外ではなく、40歳以上の男性の三人に一人がメタボ リックシンドローム(内臓脂肪症候群)に罹っている可能性が強く示唆されているのが現状です。 戦後の激変した食環境、運動不足環境が生み 出した産物であると理解したほうが妥当なのです。

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長谷川 和子(京都クオリア研究所取締役)


年度末を控えてお忙しいところ、肥満研究の第一人者でいらっしゃる京都大学の森谷敏夫教授においでいただき、肥満と健康をテーマに、これから皆様方と学んでいきたいと思います。 肥満といいますと、何とか痩せたい、色々やるんだけど、なかなかダイfエットに成功しないとか、とにかく、いろんな肥満についての話題が街中に溢れています。 そこで、きょうは、肥満のホントの理由を踏まえたうえで、健康について討論し、考える機会にしたいと思います。



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スピーチ 「健康をつくる!~肥満のホントの理由とは!?」

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京都大学大学院人間・環境学研究科教授 森谷 敏夫さん

京都大学大学院人間・環境学研究科教授
森谷 敏夫さん



この画面のような方が、すごく多くなりまして…。 アメリカに行くと、結構こういう人がいるんですね。 肥満のメカニズムということですが、一般的には、食べ過ぎて太ったっていう考え方の人が非常に多いと思うのですが、それは、あんまり当たっていないのです。 遺伝的な素因というのもあるのでが、それも、あまり当たっていない。 確かに、エネルギーを倹約する遺伝子というのが見つかっていますが、それは、いったん付けたエネルギーを、あまり無駄に使わないという、倹約するような遺伝子がアジア、モンゴル系の民族にはあるんです。 遺伝的には日本人の方が、太りやすい体質なんですね、遺伝的には。 でも、欧米人に比べると、日本人は圧倒的にスリムなので、そこから見ても、遺伝子だけで肥満が決まるわけではないんです。 基本的には、肥満は7割が生活習慣で、3割が遺伝的な素因だというふうに言われています。


/肥満人口12億人、飢餓人口と並ぶ


例えば、太っているご家族で、まあ、ご主人がやせたファミリーからきて、母親が太っておられる家族で、子どもを二人授かりますと、メンデルの法則だと、どっちかが親父に似てやせていて、どっちかがお母さんに似て太るわけですね。 でも、実はそうならないんです。 面白いことに、母親が太っているところは、子どもが二人とも太る確率が75%ぐらいになるんです。 それはなぜかというと、母親の食べ方が遺伝するから。 太る方というのは脂(油)が好きだったり、運動不足だったりで、それを、子どもが、そのまま引き継いでいくんです。 ですから、家族がよく同じ病気になるので、みんな遺伝だ、遺伝だとよく言うんですけども、それは、食生活が遺伝しているんです。


男性の場合は、奥さんと結婚してから、奥さんの料理を食べるようになっても、まあ外食も多いのであまり影響を持たないのですが、子どもは、1歳の時から、もろに、母親の食べ物を受け継いでいくわけです。 母親が太っていると、スリムになるはずの子どもも太ってしまう。 母親が太っている家庭というのは、ペットも太っているという話もあります。 実に、アメリカではちゃんと、そういう調査をやっているんです。 食生活習慣。 それがペットにまで入り込んでいる。 女性の方がやせていて、男性が太ったファミリーで、子どもが両方ともスリムになるっていうのは、結局、母親が、非常に健康とか体型に意識が高い人だと、子どもが太ると、もう少し考えてあげようということで、野菜を多めに食べさせたりするのでそうなる。 ということで、肥満に関しては、遺伝というよりも、環境因子の方が大きいのです。


いま中国で、非常に肥満が蔓延しております。 特に富裕層ですね。 中国の食事というのは油が多いのでカロリーが高いんです。 中国の糖尿病は、2030年で1億3千万人になるといわれています。 つまり、みなさん、糖尿病は遺伝だって言うふうに思っている人がいるかもしれませんが、糖尿病もがんも生活習慣病なんです。 遺伝じゃありません。 NASAの宇宙飛行士は、2週間のフライトで糖尿病になるといわれています。 健康に関しては、全くわけのわからない情報を持っているという人が多いんです。


では、なぜ、太ってはいけないかというお話なんですが、メタボリックシンドロームですね。 これ、メタボリズムが語源です。 代謝。 エネルギー代謝のことを、エネルギーメタボリズムっていうんですけども、メタボリック症候群ですから、代謝疾患症候群、つまり、脂肪とか糖がしかり代謝できない状態のことをメタボリックシンドロームっていうのですけれども、一般的には、おなかの出た人をメタボ、メタボといっている。 内臓脂肪症候群とも言います。 内臓に脂肪がたまっていると、そういう症状が出るんですね。 それで、国が、この検診を義務付けているわけでが、何で、そこまでやるかということです。 おなかが出ている方、この中にもいらっしゃいますけど、なぜ、出ちゃいけないのかという話です。 確かに、太ってもどこも痛くない。 無自覚、無痛なんです。 コレステロールの値が280ぐらいと高くったって、血圧が180ぐらいになったって痛くない。


人間の脂肪の細胞はもう変わりません。 生きている間中。 例えば、腹筋を1日1万回やっても脂肪の細胞は減りません。 やせたというのは、1個1個の脂肪細胞の中にある脂の量が減っただけです。 そういうことで、成人された方の脂肪細胞数は、どうやっても減ることはありません。 ダイエットしようが何しようが、基本的には数は変わらず、多少増えることはあっても減ることはありません。 ということは、おなかが出てきた人は、一つ一つの脂肪の細胞の中に脂がたまってきて、膨れ上がってきたということなんです。


1993年ごろでしたか、フリードマンっていう人が、肥満の原因になる遺伝子を発見しました。 それは、どうも脂肪の細胞から出てくるというんで、世界中がびっくりしました。 肥満の原因が、脂肪の細胞から出てくる遺伝子だと。 それまで、内科の先生方は、膵臓とか腎臓とか内臓の研究はよくしていたんですけども、脂肪細胞を直接研究するなんて誰も思っていなかった。 単に、脂を溜める倉庫ぐらいにしか思わなかったんですね。


このフリードマンの研究から、脂肪ってむちゃくちゃ面白いという機運が高まってきたんですね。 特に、大阪大学の松澤 (佑次)先生、内臓脂肪の研究では世界的に有名ですけれども、内臓脂肪をいろいろ研究していくと、内臓脂肪がある一定以上膨れ上がってくると、まあ、男性の場合は腹回りが85センチ以上、女性の場合は90センチ位になってくると、どうも脂肪の回りが火傷状態、つまり、炎症が起こってくる。 そうなると、その脂肪の細胞から、悪玉のいろいろな生理活性物質が出てくる。 例えば、高血圧を引き起こす生理活性物質は、実は、脂肪の細胞から出てくる。 だから、塩分の取り過ぎとストレスだけで高血圧になるというわけではなく、太って内臓に脂肪が溜まってきて内臓の脂肪が炎症を起こすと高血圧を引き起こしてしまう、というんですね。


糖尿病もそうです。 糖尿病が遺伝だなんて考えたら、まったくおかしな話です。 糖尿病の診断基準っていつ頃できたか知っていますか。 WHOの診断基準は、恐らく1960年ごろなんです。 だから、世界的に見ても、糖尿病なんてのは、1960年以降に、ぼちぼち目立ち始めたんです。 ぼくが生まれたのは、1950年。 その10年前にそういう基準が生まれている。 日本でいうと、昭和30年ごろにできたので、それ以降に、初めて日本人の糖尿病の患者さんの数が把握できるようになった。 その数から比較すると、1昨年で、糖尿病患者は1千万人を超え、昭和30年ごろの何と50倍近くです。 これ見れば、遺伝でないってことが小学生でもわかります。 糖尿病は非感染性の疾患で人にはうつらないんです。 エイズや結核が50倍というのならあり得ます。 でも、人にうつらない病気の患者さんが、今、50倍にもなっているのを、お医者さんはよく遺伝って言いますが、これ、どうやって説明できますか。 遺伝って有り得ない。


とりあえず、いろいろな病気を持つ遺伝子は、脂肪の細胞から出てくる。 それがわかったので、厚生労働省は、中年の男性でおなかが出てきたら、それをできるだけ食い止めておけば、その後の病気は起こらない、としているわけです。 いろいろな悪い生理活性物質が出なければいい。 今のところ、おなかが出ている人は、6キロほどの減量に成功すれば、そういう生理活性物質は出てこなくなるだろう、無罪放免になるだろう。 でも、それができない。 なぜかというと、その一つの原因は、医学部に栄養学がないことです。 日本の大学の医学部で栄養学部が併設されているのは、徳島医大だけです。 きょう、お医者さんもいらっしゃいますが、申し訳ないですけど、お医者さんに栄養の話を聞くのは、少し方向が違っているわけです。 医学部には、私の専門にしている運動生理学ってないんです。 アメリカは必修です。 糖尿病にどんな運動をさせたら血糖値が下がるのか、太っている人にどういう食事と運動を組み合わせてやるのが一番効果的か。 心臓リハビリにはどんな運動がいいのか、ってこれ当たり前の話です。 医者がやらないといけないんです。 骨粗しょう症の予防のためにはどんな運動がいいのだろう。 筋肉がなくなってきて散歩の時に転倒して骨折するご婦人たちがいっぱい出ている。 一体、どんな運動で筋肉が大きくなるのか、ってこれ、運動生理学です。 でも、医学部には運動生理学がない。 国家試験には、運動生理学の問題、栄養の問題は出ないですから。


ということで、おなかが出てきたら、基本的には、糖尿、高脂血症、高血圧、動脈硬化…。 血栓というのは、血の塊ですね。 これが、脳の血管に詰まると脳梗塞になります。 心臓の冠動脈に詰まると、心筋梗塞。 その血栓を形成する遺伝子みたいなのは脂肪の細胞から出るんです。 だから、おなかが出たまま放っておくと、確実に、軽い高血圧、高脂血症、糖尿、軽い脳梗塞、心筋梗塞。 確かに今は、血栓を溶かしたりするのでほとんど後遺症は残りません。 心臓の血管がつまってくれば、ステントをトーンと入れれば、翌日には退院できます。 だが、その先に待っているのは、認知症です。 ということで、太ったら踏んだり蹴ったりなんです。 だから、ぼくは太っていないんです。 野生の動物は、成熟して死ぬまでの体重の変化は±1~2%です。 私がその通りです。 67キロの体重が、24歳から全く同じです。 体脂肪は一ケタで後でお見せします。 歳いって中年太りするのは、ぼくからしたら、知識がないからです。 基本的な知識がない人が、中年太りをどうしようって、わけのわからないダイエットで右往左往している。


ということで、とりあえず覚えておいてほしいのは、太っておなかが出ているということは、いろんな生理活性物質が出て病気を引き起こすっていうことです。 例えば、肥満症、昔は、病的に太っているのを、肥満症っていう言葉を使ったんですね。 CTスキャン撮って、内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上で、腹回り85センチ以上、BMIが25以上を、肥満症といった。 つまり、あなたは今、病的に太っていますよ。 でも、そういうのをやるためには、各自にCTスキャンを撮らないといけないので、金もかかるし無理だということだったんですが、ちょうど、そのころに、内臓に脂肪がある人は、血圧が高くなったり、血糖の値が悪くなったりするそういう生理活性物が出ることがわかったので、あ、そうか、いちいちCTスキャンを取らなくてもいいいんだということで、腹回りが大きくて、内臓に脂肪がある人だったら、血圧、脂質、血糖値を測る。 これ、トータルでアウトになるとメタボの診断をするようになった。 いちいちCTスキャン撮らなくていいわけです。


ところが、おなかが出てればみんなメタボかというと、そうとも言えない。 お相撲さんに、メタボはいません。 腹回り120センチ位で堂々としているんですが、よく運動していますから、内臓にほとんど脂肪はない。 だから、あの人たちはただの肥満で、メタボではない。 病院に行かなくていいです。


肥満症というと、やせているスリムな人に比べて、死亡率は2倍高くなります。 肥満と糖尿がそろうと、これで大体4倍、さらに、脂質異常が加わると9倍、高血圧が加わり四つそろうと、これ、「死の四重奏=Deadly Quartet(デッドリーカルテット)」といいます。 これの特徴は、無自覚、無痛なんです。 「死への序曲」が流れていても、本人には、何も聞こえない。 一般の人がかかってしまう病気です。 これで、さらにタバコを吸われると、もう血管系の障害は31倍に跳ね上がる。 どうぞお吸いやす。


死の四重奏


この表は、九州大学が福岡県の久山町で15年にわたって追跡した有名な調査研究の結果です。 糖尿病のお薬を飲んでいた人、おなかがかなり出ていたいわゆる肥満症のレベルだった人は、その後の15年間で、アルツハイマーの発症率が4・6倍も多かった。 ガンでも3倍以上多く死亡しているんです。 やっぱり、中年以降、おなかが出たままにしておいて、特に、血圧が高くなって、高脂血症があって、どうも、内臓脂肪が炎症を起こしているなあという症状があるんだったら、先は、こうなりますよというお話なんです。 こういう話は、でも、あんまりパブリックにはいかないんです。 たいてい、偉い先生が「きょうはメタボリックシンドロームについてお話しします。 うにゃ、うにゃ、うにゃ…」と、何を言っているかわからない。 だから、一般の人はわからない。 皆さんも、こういう話を聞いたことないでしょう。 脂肪細胞から何かいたずらするものが出てくる。 こういう話をテレビ局でも出したらいいんだけど、出さないですね。 ぼくがいうと、いやあ、先生は、むにゃむにゃ。 まあ、ぼく、時たま興奮すると、放送禁止用語がバンバンでるんで…。


糖尿病の人はアルツハイマーの発症率が4.6倍も多かった


さあ、このすごい女性の出ている画面。 世の中には、1日、2日で脂肪が1キロも2キロも減るなんて思っている人がいるけれども、それ、錯覚なんです。 体重は減りますよ。 でも、体重が減ったことと、脂肪が減ったことは違うのに、体重が減ったら脂肪が痩せたと思うんです。 これ、ナンセンスです。 だから、いつまで経ったって、ほんとに脂肪は減っていかないんです。


実は、写真のこの女性が太った原因は、1日わずか20キロカロリーのカロリーオーバーです。 ちょっと説明しますね。 この人は、20歳の時から40歳までで、40キロ太りました。 その間、20年間なんですね。 コーヒーに、砂糖を多い目にスプーン一杯入れると20キロカロリーです。 この人は、ある時、コーヒーを飲む習慣ができて、それも、おいしいというので、朝か昼、砂糖を入れて一杯飲み、夜も、寝る前に、砂糖を入れてコーヒーを飲むようになった。 これで、それまでより、1日40キロカロリーオーバー。 これ、大したことないようですが、でも、1年経つと365倍になります。 20キロカロリーだと7000キロカロリーを超えます。 みなさんの体の1キロの脂肪は概ね7200キロカロリーで概算します。 つまり、この方は、砂糖入りのコーヒーを1日二杯飲んだために、1年で2キロ脂肪がつくことになります。 単純計算ですよ。 その結果、10年で20キロ、20年で40キロ太ってしまったというわけです。 同じ時に、森谷先生は、コーヒーをブラックで飲み、体重は変わらなかったのに、彼女は、40キロ太りました。 おめでとうございます。


こういう小学校2年生の算数ができない人が、ああいうテレビを作っている。 「引っ越ししたら2キロやせました」―馬鹿を言ってはいけない。 2キロって言ったら、みなさんの8日分の食事でしょう。 1日の食事で、1500~1600キロカロリーを摂っていれば、脂肪1キロにあたる7600キロカロリーっていうと、4日分ですよ。 「あなたは8日も断食したのか。 2キロやせたというけど、鏡を見てみなさい」といいたくなります。 2キロの脂肪っていうと、この500㏄のペットボトル4本分ですよ。 あるテレビの番組で低炭水化物ダイエットをやっている某女性タレントさんが2キロ痩せたというので、今のペットボトルの話をしたら、顔がこわばっちゃった。 ある男のタレントは10キロ減ったという。 ペットボトル20本分ですよ。 減ったのが脂肪であるわけがない。 がりがりどころか、それだけ脂肪がなくなったらこの世に存在できないですよ。


体重が落ちたら、脂肪が減ったと思っている。 大きな間違いです。 体の構成の6割は水でしょう。 どこに水はあるんですか。 筋肉ですよ。 筋肉に、水がグリコーゲンという形で合成されているんですよ。 筋肉は、動くために神様がお造りになったので、ここに、燃料がいっぱいあるんです。 そして肝臓には、脳のエネルギーがいっぱい貯まるわけです。 1個のグリコーゲンに水が4倍結合して糖質が体にたまっているんです。 だから、筋肉がたくさんある人は、グリコーゲンがいっぱいあるから、水がいっぱいある。 ぼくは、プールの中で息を吐いたら、そこで止まります。 浮いてきませんよ。


ということで、そのグリコーゲンは、糖質、脳のエネルギーなんです。 ところが、低炭水化物ダイエットって、この脳の栄養を拒否するわけです。 脳のエネルギーは、100%糖質ですよ。 ここだけで、1日に2割のエネルギーを使うんです。 脳には、グリコーゲンも脂肪もない。 脳細胞と血管しかありません。 そこに、血液中のブドウ糖が行って、インシュリンの作用で脳のエネルギーになるんです。 これが、1日のカロリーの2割、400キロカロリーほど使うんです。 最近の男性は仏さんに供えるご飯ぐらいしか食べない。 これで、脳のエネルギー足りますか。 足らないから、一生懸命、肝臓のグリコーゲンを分解したり、歩くと燃料がないから、筋肉のグリコーゲンを分解する。 すると、そのたんびに、水も4倍なくなる。 で、あら不思議、2日ぐらいで2キロぐらい体重が落ちる。 でも、これ、水が落ちただけだから、やせたようには見えない。 自分の体から水が出ただけで、脂肪が減ったわけじゃないから、見ただけではわからない。


わかりましたか。 痩せた、痩せたというのは、実は、水しか出ていないんです。 ほんとうに脂肪を2キロ取れれば、見事に体型は変わります。 ダイエットの目的は体重を減らすことではなくて、脂肪を減らすことなんです。 1カ月で8キロ痩せたとか、ある医者は、患者を1カ月10~15キロ痩せさせるんだといっている。 医者のくせに馬鹿じゃないかと思います。 小学校2年生の計算ができない。


ちょっと計算しやすいように、1キロの脂肪を7000キロカロリーと見積もります。 すると、8キロの脂肪は56000キロカロリーですね。 彼女は、体が大きいから、仮に、基礎代謝が1800キロカロリーだとします。 そんな大きい人はいませんが…。 それで、彼女は、30日断食して、普通は死にますけど、奇跡的に生きたとすると、その時使うエネルギーは54000キロカロリー。 この計算見て、どうやって、1カ月で8キロも痩せるの。 この世に、1カ月で8キロもの脂肪を取れる人はいないんです、物理的に。 何回も言いますが、小学校2年生でもわかる計算です。 なのに、15キロもやせたとか、言う。 痩せてないんです。


肥満の原因は一日わずか20Kcalの食べ過ぎ?


これが、1992年に出ました「The American Journal of Clinical Nutrition」という雑誌に載っているのですが、「脳と筋肉の非常食であるグリコーゲンは、肝臓、筋、脂肪細胞に3~4倍の水と糖質が一緒に結合したエネルギー源である」と。 だから、人間の体の6割が水だというわけです。 女性は男性より平均的に筋肉が少し少ないので、女性の構成は約55%近くが水だといわれている。 だから、一般的なダイエットは、水が出たり入ったりして喜んでいる。 そういうダイエットは、つまり「水の泡ダイエット」というわけです。


この実験では、1日405キロカロリーですから、脂肪、糖質も全部足りません。 そうするとどうなるかというと、体重は多い場合、4~5キロ落ちるが、体脂肪は減少しない。 脂肪はなかなか落ちないんです。 1キロの脂肪は、7200キロカロリーで、みなさんの4日分の食事全部です。 だから、1日、2日ぐらい断食したところで、脂肪が、1キロとか2キロも取れるはずはないんですよ。 何度も言いますが、小学校2年生の算数なんです。


糖質制限ダイエットの危険


今、画面に出ている、糖質制限ダイエットをした人、最近亡くなりました。 桐山(秀樹)さん。 心不全ですね。 この人は、糖尿病だったんです。 京都にある病院でも糖尿病の患者に炭水化物をいっさいとらないとか、厳しくダイエットを勧めている先生がいますし、栄養学関係の先生では、真っ向から反対している先生もいます。 どっちが、という話は、今時間がないので説明しませんが、後でいくらでもお答えします。 こういうことをやったさっきの人は、ここに書いているように「主食を抜く糖質制限に取り組み、3週間で20キロのダイエットに成功。 その体験を著書で発表するなど、糖質制限の伝道師」と呼ばれていた。 でも、一体3週間で、どうやって20キロも痩せられるんだ?! さっきまでの話で分かるでしょう、痩せたっていっても、こんなん、水だけしか出てないんですよ。 水出してどうするのってことです。


朝食を取らない人がいる。 このダイエットは糖質を取らないから、朝食も食べない。 朝食を週2回以下しかとらない人は、ぼくのように毎日食べる人に比べて、脳出血の危険性が36%高まる―朝食と脳出血に関連するこんな阪大の研究が、米誌に発表されました。 これ、なぜだかわかりますか。 朝から何も食べなかったら、脳にエネルギーがないわけですよ。 前日に食べたのは仏さんのご飯ぐらいで、寝ている時に全部消費している。 朝はレッドゾーンですよ。 だから、ダイエットしている人、女性も男性も、脳にエネルギーないから、朝、吊革を持って、かくっ、かくって寝てる人がいる。 京都大学では、こんな面白い私の健康科学の講義でも、朝の1講時目、ぐぉー、ぐぉーってって、京大生が3分の1ぐらい爆睡している。 飯食わない、あるいは、低炭水化物ダイエットをしているから、脳のエネルギーがレッドゾーンに入っているんです。


脳の栄養がない時に、人間は動きますか。 動いたら早く死ぬんです、動物は。 だから寝るんですよ。 これ、実験用のラットさんと全く一緒です。 エサを半分にして続けます。 すると、ラットはどうして対応すると思いますか。 ラットは、夜中にチョチョッと起きて、エサ食ったら、その後、ひたすらグースカ、グースカやって、睡眠時間がうーんと伸びます。 若いダイエット専門のおねえちゃんも、京大でまったく同じ。 朝から爆睡している。 生きるためだからね。 恋せよ乙女、zzz、zzz! すいません。 絶好調になってきました。


ということで、朝飯を抜くと、血糖値が落ちているので、脂肪をエネルギーに使いたいから、アドレナリンとか出て、脂肪を分解したり、血糖を上げるホルモンがいっぱい出るわけです。 その時、交感神経が働くので血圧が高くなる。 糖質がないから、筋肉を脂肪で動かそうと思って、脂質を一生懸命分解するわけですよ。 そうすると、血中の脂肪が多くなる。 それで、お昼ご飯を食べるわけです。 でも、筋肉は、脂肪を優先的に使おうとしてますから、血糖がなかなか下がらない。 むしろ、急激に血糖が上がる。 だから、基本的には、糖尿病の人こそ、朝昼晩、きちーっと糖質を摂らないといけない。


接種栄養素含量と全死亡率比の遠隔成績


この図、これがエビデンスです。 糖質を1日約60%摂っている人、約36%摂っている人、男性4万人、女性8万5千人を追いかけました。 どっちが死ぬんですか。 すべての死亡率を見てみますと、60%取っている人が一番死んでいないんです。 これ当たり前の話なんだけど、これに反対する先生がいる。 日本の内科のお医者さんは、6割が低炭水化物はいいんだといっていて、何と自分で実践している先生が50%もいる。


わからないんですかね。 ぼく、専門家です。 例えば、今、みなさんの体が何のエネルギーを使っているかって、すぐ分析できます。 「呼吸商」といいます。 みなさんがエネルーギーにするのは、普通、じっとしている時は、50%が糖質、50%が脂肪なんです。 タンパク質は基本的には、体を再構築するのに使うので、エネルギーとしては使いません。 タンパク質をエネルギーとして使うのは、飢餓の時だけです。 アフリカの子どもなんかのように、何も食べるものがなかったら、筋肉を分解して、アラニンにして肝臓にもっていって、ブドウ糖にして脳に送る。 つまり、脳に自分の筋肉を食わすんです。 今、それをやっている女子大生がいっぱいいます。 朝から晩まで、食事があるのに飯を食わない。 難民飢餓の練習をしているのですね。 自分の筋肉を、一生懸命、脳に食わせている。 だから、一応痩せます。 ところが、脂肪はついたままなんです。 BMIは19で、ナイスバディ! でも、なんかホニョ、ニョニョってしてると思って、体脂肪を測らせてもらうと、何と30%っていうのがざらにいます。 隠れ肥満。 京大生の17%が隠れ肥満です。 正常BMI、体脂肪30%超。 のずいぶんスリムで美しく見えますが、あれは筋肉がそぎ落ちている。 後の32%程度が、BMI正常、体脂肪25%以上29・9%未満の正常体重肥満(隠れ肥満傾向)。 つまり、両方合わせると、京大生の50%が隠れ肥満、あるいは隠れ肥満傾向。 なんで、そんなことができてきたかというと、こんなバカな低炭水化物ダイエットが流行っているからです。 だからぼくの授業では、「飯を食え! 自分の筋肉食わせてどうするんだ!」って言っています。


糖質は、人間の摂るエネルギーで最もクリーンなエネルギー。 最もきれいに燃えるエネルギーです。 脂肪はこんなでっかい分子式。 脂肪をエネルギーに変換するにはたくさんの酸素が必要で、活性酸素がいっぱいできます。 脂肪を余計にとれば、コレステロールも高くなるし…。 だから、クリーンな糖質を6割摂って、脂肪を20%、たんぱくを20%摂れば完璧なんです。 だから、世界の栄養学の先生が、糖質60%を基本に食べなさい、と栄養学の本に書いている。 さっき言ったでしょう、体のエネルギーの半分以上が糖質なんです。 例えば、基礎代謝が1200あったら、そのうちの600キロカロリーは糖質なんですよ。 そして、脳の400キロカロリーはすべて糖質なんです。 摂取するエネルギーの6割程度を糖質で摂らないと足らんでしょう。 足らん人はみんな寝てるわけですよ。 糖質が足りないから、たくさんタンパク質や脂肪を食べないといけない。 タンパク質をたくさん食べるとガンになりやすいし、活性酸素も増える。 どっちが早く死ぬか自明のことです。 アフリカのチンパンジーは、9割のエネルギーを糖質で摂るんです。 脂肪はとらず、タンパク質が1割。 アリを食べます。 その糖質の実に70%をフルーツから摂ります。 これが、人間に一番近い霊長類が食べている実際の食べ物です。 ぼくは、この霊長類に近いです。 ぼくは70%のエネルギーを糖質で摂っています。 空手とか運動をする時にたくさんのエネルギーを使うからです。


低炭水化物ダイエットが長く続くと、感情プロフィールにも影響を及ぼすというのが、最近の研究でわかっています。 京大生の健康科学の講義に来ている学生さん、1割以上が鬱傾向です。 事務職員は2割以上が鬱傾向です。 なぜかというと炭水化物を取らないからです。 太っている女性を対象に、1年間、同じカロリー、同じたんぱく質の低炭水化物高脂肪食と高炭水化物低脂肪を摂らせる二つのグループを作り、カメラで監視しました。 両方のグループが同じように13キロ痩せました。 しかし、抑うつ・落ち込みなどの心理状態は、高炭水化物低脂肪食は有意に改善。 一方、低炭水化物高脂肪食は確実に悪くなる。 気分障害スコアも高脂肪食は悪くなる。 当たり前ですよね。 炭水化物が摂れないストレスです。


結論


ところで、太ったのは、食べ過ぎだというが、実は、この表を見てください。 (資料)食べ過ぎていないんですよ。 これ、日本の20歳以上のエネルギー摂取量です。 今、摂取量は減ってきているんです、毎年。 今は、終戦翌年よりもまだ下回った食事しかしていないんです。 飽食の時代というが、1900キロカロリーを下回っている。 これが飽食ですか。 一番食べていたのは、1975年。 今より400キロカロリーも上回って食べていた。 この摂取量を今やったら、1年で、20キロ太ります。 ところが、現在では400キロカロリーも少なく、ほんとは20キロ以上も痩せていなきゃなんないのに、むしろ太っている。 これをどう説明するか。 食べ過ぎていないのに太っているんです。 つまり、食べないけど、それ以上に「動かない」ということなんですよ。 今、こん中で動いているのはぼくだけですよ。


これ、動くというのは、67キロの物体を移動させると、じっと座っている人より3倍もエネルギーがいるんです。 座っているみなさんより3倍のエネルギーを使っている。 立っているだけで、重力に逆らって、1・2倍エネルギーを使っている。 立っているだけで、20%の脂肪と糖質をずーっと燃やし続けている。 ぼくは、講義でずっと立ったままです。 時には跳ねますけど、1回授業やったらどのぐらいエネルギーを使っているのか。 朝一番の授業で、昼前になったらもうおなかすいていますよ。 ま、そういうことで、最近、多くの人が太ってきた理由は、食べないけど、それに輪をかけて動かなくなってきたからです。 動かない人は、みんな太るんです。


マサイ族の消費カロリーは3000~5000Kca


マサイ族は、1日3000~3500キロカロリーも摂ります。 それでも痩せています。 何で痩せるかわかりますか。 この人たちはミルクが主食で、3リットルも4リットルも飲みます。 電車もバスもない。 起きてから寝るまで、16時間、ずっと立ってるんですね。 それだけで、みなさんの20%も余分にエネルギーを使うんです。 立ってばかりでは何なので、歩きますね。 歩くと3倍エネルギーを使います。 水を汲みに行って往復10キロ歩く。 落ち着いたら牛のエサやり。 また、8キロ先まで行く。 だから、これだけ食べても足らないんです。 弥生時代の人たちも、少なくとも3000キロカロリーは食べていたといわれています。 痩せたい人は、1日中立っていればいい。 確実に痩せます。 ダイエット食品は何にもいりません。


これ、私ですね。(1)


これ、私ですね。(2)


これ、私ですね。 筋肉ばかり。 柔軟性も大事です。 この股割り、誰でもこうなりますが、股が開かない人は、使っていないからできないんです。


それで、今、言われているのが、このNEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis=非運動性熱産生)というやつです。 何のこっちゃというと、1日のうちの3~4割近いエネルギーは、何気ない日常の動作で消費しているのです。 例えば、立ったり座ったり、トイレに行ったり、移動したり、運動という運動にはならないんだけど、確かに、起きてから寝るまで16時間、ちょこちょこ動いていけば、かなりのエネルギー、2000キロカロリーのうちの4割というと800キロカロリーを消費する。 少ない人は、これで200~300キロカロリーしか使わない。 朝、散歩して30分歩いたって、75キロカロリーしか使わない。 歩いているから、痩せている、歩かないから太っているってことじゃないんです。 これですよ。 日常の生活のこの4分の1を何に使うかなんです。 1日中座っていると、エネルギーを使わないんです。 ここが、機械文明が進んだんで、みなさん、日常での活動が減った。 これこそ、食べなくなったんだけど、メタボが増えている大きな理由。


ハミルトンっていう糖尿病の専門医が、ここの部分を意識させれば、何とか糖尿病は予防できるだろうといっています。 実際に、実験しました。 16人の人に、千キロカロリー毎日余分に食べさせる過食実験です。 これ、30日やると、ちょうど4キロ太る計算です。 結果は、どっぽり4キロ太った人もいれば、体重が0・5キロしか増えなかった人もいます。 間違いなく千キロ余分に食べてもらいました。 これには、きれいな相関関係が出ました。 過食実験が始まったので、ご飯食べた後、何かよく動く。 こういう人は全然、体重が増えていない。 逆に、もういいって、NEATが減った人がいて、これは4キロ太った。 ということで、NEATの大切さが実験で証明されています。 結局、太っている一つの原因は、食べ過ぎというより、立ったり動いたりしている時間が少ない。 座っている時間が多いって言うふうに考えた方が正しい。 最近は、座っていること自体がリスクですから、座らないようにしましょう、ということになっています。


累計生存率


カナダの例です。 1万7千人を13年追跡しました。 すると、1832人が死にました。 心臓循環器疾患で759人、がん547人…。 影響因子を統計的に補正しても、座っている時間が増えると、すべての死亡リスクが高くなる。 1日中立って生活する人のリスクを1にすると、1日4分の1座る人は10%アップ、半分は36%アップ、1日中座っている人は1・54倍。 皆さんは、何時間座ります。 座る時間で見事に死亡率が増えていきます。 この調査、これからも続くでしょうが、20年後になると、ものすごく大きな差になるはずです。


では、食事の話をして終わります。 医学部と我々との違い。 農学部、薬学部も実験は
ラット、モルモットを使います。 この表は、1993年に、初めて人でやった実験なんです。 それまでは、すべてラット、モルモットです。 その大きな違い、わかりますか。 ラットにはほとんど脳がないんです。 ラットがほしくない糖質をいっぱい食わせると、脂肪肝になって、一発で糖尿になる。 これを見た医学部の先生は、「そら見てみい、高炭水化物はすぐ糖尿になる」って。 でも、ラットでしょう。 ラットには脳がほとんどないので、糖質はいらないのです。


1000Kcalの過剰脂肪接種でも脂肪酸化(燃焼)の代謝反応は起こらない。


人間のデータを見ますと、これ、エネルギーの出納を24時間記録できる装置を開発しました。 開発したJequierさんにスイスに行って、話を聞きました。 この人は、最初わからないので、実験的に、脂肪を千キロカロリー食わせてみようと、余分に食べさせる実験をしました。 すると体がどう反応するかというと、以前と全く同じです。 では、余分に摂った脂肪はどうなるか、24時間以内に体脂肪になります。 余分に摂った脂肪は全部、脂肪になります。 ここまでは人間もラットも一緒です。 でも、次から違います。


炭水化物、脂肪、たんぱくの入っているものを9日連続で食わせます。 過食実験。 で、これが脂肪の代謝です。 1・6倍摂りました。 すると、体がむしろ脂肪を消費しなくなり、余分に摂った脂肪が全部、体の脂肪になります。 右側、炭水化物を1・6倍摂っていくと、糖質が3倍の水と結合してグリコーゲンになって肝臓や筋肉などに貯蔵されます。 この時体重を測ると、めちゃくちゃ重くなります。 でも、脂肪ではありません。 で、9日目になりますと、余分に摂った炭水化物は全部消費されました。 つまり、人間は、自分の体に貯めこめる炭水化物は、ある量以上は貯められなくなると、熱と放散します。


余剰のタンパク質、糖質はその日のうちに代謝されるが脂肪は蓄積される。


この時、脂肪はどれぐらい付いたかというと、1日9グラム程度。 余剰の糖質からは、9日で80グラムしか脂肪が合成できなかった。 ラットの肝臓と人間の肝臓は根本的に違っていて、人間の肝臓は、糖質を脂肪に変えることは、ほとんどできません。 全部、グリコーゲンにします。 当たり前のことですが、脳を大事にするためにそういうふうに進化したんです。 ラットは、何を食べても脂肪にすればいい。 脂肪は、軽くてもっともたくさんエネルギーを蓄えられる。 ラットが、人間のように糖質食って水を貯めてグリコーゲンにしていたら、重くなって、逃げられなくなってしまう。 人間もラットのようにしたいけど、脳が大食漢だから、そうはできない。 だから、いっぱい寿司を食っても脂肪にはならない。 水が入って重くなります。 だから太った太ったって言いますが、太っていない。 重くなったのは水が入っただけ。 脂肪にしないんです。 グリコーゲンにして貯めているんです。 だって、翌々日に震災があって、何も食べるものがなかったら、脳が死ぬでしょう。


この人たちは、また別に実験をして、アメリカの生理学会の権威ある雑誌にその論文を最終的に出しています。 それは、体重の変わらない女性たちを使って、すべてを余分に食べさせてトータル千キロカロリーの過食実験をしました。 余分に摂ったタンパク質はほとんど問題にならない。 たくさん摂っても体を構築するために全部使われます。 余剰になった部分はほとんど脂肪にならず、発熱します。 優先順位は、体を構築するたんぱく、炭水化物。 その次、最悪の優先順位は脂肪なんです。 足りなかったエネルギーだけを満たすわけです。 残りのエネルギーは、24時間以内に脂肪になります。 ですから、「痩せたい人は脂肪を食うな」です。 これがアメリカ生理学会の機関誌に掲載されたこの研究の結論です。


余剰のたんぱくと糖質は、その日に代謝されるが脂肪は蓄積する。 糖質を脂肪に合成する場合、人間の場合、25%のエネルギーが必要。 米をよく食ったりすると、重くなりますよ。 でも、重くなるのは、瑞々しい体になったんだよ。 体重が増えることを心配したってしょうがない。 脂肪は増えてないって。 脂は、そのままエネルギーロスなしで脂になります。 高糖質食条件下で、実験では、千キロカロリー以上も炭水化物を余計に食わせても、人間の体で脂肪合成は1日10グラムを超えることはない。 英語では、もっと強くなって「It was concluded」。 わかります? ぼくが痩せている理由。 炭水化物を摂るからなんです。 これ、まったく反対な意見の人もいます。


脂肪接種エネルギー比率と年次推移


さて、このグラフ。 これ、日本人が摂ってきた脂肪の量です。 ぼくが生まれたのは昭和25年、1950年、このころは、1日7%というのが、日本人が摂っていた脂肪のエネルギー比率。 それが今はその4倍以上になっている。 多くの高校生は30%をオーバーします。 アメリカ人では食事に占める脂肪の占める割合は30~40%というのはざらにいます。 みんな、脂を摂ってNEATが少ない。 脂を摂取して動かず、カロリーが余ったら、全部、脂は体の脂肪になります。 これが、今、特に男性で、多くの人がメタボになっている理由です。 脂が多いんです。


これは、糖尿病人口の世界ワースト10。 トップは中国ですね。 2011年は9000万人。 このままいくと2030年には約1億3千万人に。 昭和30(1955)年、日本の糖尿病患者は31万人。 2011年は1070万人と増えてきた。


糖尿病人口世界ワースト10


糖尿病―漢字が悪いんですね。 糖を摂りすぎるから尿から漏れる。 そのイメージで糖質カットのオンパレード。 糖質カットのビール、糖質ゼロのドリンク…。 みんなわかっていない。 糖質は、いけないものだと思っている。 宮澤賢治の詩を読んでくださいよ。 「雨ニモマケズ」。 「一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ…」と書いてある。 これを忠実に再現したものが画面に映っています。 これだけ食べていたんです。 これだけ食べていて、その時の日本人に、糖尿病はいないんです。 飯食って糖尿になったり、砂糖食べ過ぎて糖尿になる、そんな馬鹿なことはない。


では、何で糖尿になるの? それは、筋肉の病気だからでしょう。 これがわからない人がいる。 糖尿は筋肉の代謝疾患なんです。 膵臓がやられるのは、筋肉を使わないからです。 神様は、もともと筋肉を動かすためにお造りになったんです。 だから、基本的に糖質の70%は筋肉で使われ、脳のエネルギーは100%糖質なんです。 何のために炭水化物を食べるかというと、筋肉と脳は、90%の糖質を消費する臓器。 筋肉は最も大量に、糖質と脂肪を燃やす臓器なのです。 医学部では筋肉勉強しないんですよ。


糖尿病は筋の代謝疾患である!


宇宙飛行士は、なぜ糖尿病になるか。 無重力に行った瞬間から、筋肉はエネルギーがいらないんですよ。 世界で一番健康を管理された宇宙飛行士が、無重力に行くと2週間で筋肉が15%ほど無くなります。 閉経した女性だとカルシウムが1年に1%ぐらいなくなっていきますけど、無重力では、その1年分のカルシウムが1日で抜ける。 宇宙飛行士は、2週間の間、1度も筋肉はエネルギーを使わない。 ものは手でちょっと触れれば飛んでいくし、体重はゼロですよ。 地球に帰ってきた宇宙飛行士は、糖負荷テストを受ける。 すると彼らは、糖尿病よりはるかに悪い状態です。 糖尿病の専門医も、こういう現実をほとんど知らない。


筋肉を全然使わないから、糖が余る。 余るから膵臓を酷使してインスリンを出し、糖を代謝しようとする。 毎日、来る日も来る日も動かない。 だから、ずーっとすい臓が酷使される。 もともと遺伝的に、アジア民族の膵臓は弱い。 今始まったわけではないが、膵臓が弱いから、小錦さんみたいには太れない。 あそこまで太る前に、必ず糖尿になります。 膵臓の絶対的キャパは、確かにアジア民族は弱いけれども、それが糖尿の原因ではない。 原因は、老若男女、動かないこと、だから糖尿になる。


血液にあるブドウ糖は脳や筋肉の細胞膜を通れないので、われわれは特別の運搬車(糖輸送担体)を持っている。 このグルコーストランスポーターは二つの信号で動きます。 一つはインスリン。 もう一つは、それとはまったく独立したメカニズムです。 筋肉でエネルギーを使うとエネルギーが少なくなってAMPキナーゼというものが動き、これでブドウ糖を運ぶ運搬車が動きます。 つまり、よく運動する人は、糖を代謝するときにインスリンはいらないんです。 逆に、運動してない人は、ちょっと血糖値が上がったら、すべてインスリン依存で糖を代謝する。 運動不足で、エネルギーを使わない人は、普通、この運搬車が半分に減ります。 宇宙飛行士は、2週間のフライトで、3分の1に激減する。 この運搬車が半分に減れば、ちょっと血糖値が上がるとインスリンを2倍出して、これをピストン運転しないと糖が代謝できなくなるから、膵臓はさらに頑張り、ついには疲弊して糖尿になる。


糖質カットのいいこと、余り言わなかったですけど、これ、意図的ではなくて、それを言い始めると、その反論も、またいっぱい持っていますので…。 でも、一つだけ言っておきます。


老年医学の順天堂大学の先生方が主に、低炭水化物ダイエットというのを非常に勧めています。 それは、認知症が脚光を浴びていて、先生方曰く、認知症は脳の糖尿病だと。 だから、さっき、糖尿病の人がアルツハイマーで4・6倍も多く死んだというデータをお見せしましたけれども、確かに糖尿病の人にアルツハイマー、非常に多いんです。 それは、糖代謝がうまくいかない。 脳のエネルギーはすべて糖なので、糖代謝がうまくいかず、脳神経細胞が死んでいくのだろうと。


そこで、この先生は、実験したわけじゃなくて、アメリカの症例を参考にしたんですね。 ココナツオイル。 これは、食べると、これに含まれる中鎖脂肪酸がケトン体というエネルギーになります。 脳細胞は、ケトン体を使うことができる。 だから、アルツハイマーの症状が悪かった人に、ココナッツオイルをものすごく食べさせ始めたら、認知症が劇的によくなったという症例が、1部出ている。 炭水化物はいくら食わしても、血糖だから脳が使えなくなった、それがひょっとしたら、アルツハイマーだろう、と。 だから、アルツハイマーの予防に神経細胞のためには、ケトン体さえあれば、脳は十分エネルギー使えるんだ、と。 だから、低炭水化物ダイエットすると、糖尿病の予防にもなるし、脳はケトン体で生きていけるから眠くならないし、これは理想的だということをおっしゃっている。


確かに、拍手なんですけど、これ、炭水化物を20%以下に抑えるダイエットなんですね。 すると、80%のエネルギーが脳とか筋肉とかでもいるわけです。 これを、全部ケトン体から摂るんですかって話。 何百グラム、ココナツオイルを食べたらいいんですかって話になるわけです。 これ、データは、自分の臨床で使った特定のAさんのものです。 体重が1カ月で10何キロも落ちている。 素晴らしいココナツオイルの低炭水化物ダイエット。 どんどん勧めましょうということで、今、話題になっているんです。 これが背景になっているのが「ライザップ」っていうやつで、炭水化物20%以下で抑えるプログラミングでやっているわけですね。


ではこんなところで。 この後、いろいろ聞いていただけたら、と思います。





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